ヒラメの刺身

ヒラメの刺身は、コリっとして甘みのある「縁側」が好まれますが、ほど良い食感の身の方も、劣らず美味です。

ヒラメが美味しいのは、良い餌を食べているためと言われます。
鋭い歯を持つヒラメは、海の底のエビやカニの殻をかみ砕き、素早い動きで小魚を捕らえることもできます。
同じく海底に住むカレイが、小さく軟らかい生物を餌としているのとは、対照的と言えるでしょう。

しかし、その美味しさには別の理由もあるのでは、と考えています。
水平にした魚体を、激しく撓らせながら水中で餌を追うとき、ヒラメは尾やヒレだけでなく、全身の力を使っているように見えます。
小魚を捕らえるほどの瞬発性を持つ筋力が、その身を美味しくしているのではないかということです。

キュッと引き締まったヒラメの身は、脂の乘った「縁側」の旨味とは異なる、淡白で繊細な美味しさを楽しむことができます。
鮮度が良いほど、ポン酢はうす味の方が良いでしょう。

本日は、ヒラメの舞い踊りならぬ、餌を求めての鋭いターンを思い浮かべながら、食して頂くのも良いかと存じます。